私は「集」をテーマで作品を制作しています。
きっかけは、小学生の頃に読んだレオ・レオニさんの絵本『スイミー』でした。
大きな魚を恐れて岩陰から出られなかった魚たちと一緒に、主人公のスイミーが大きな魚を模倣して広い海を泳ぐことができた話です。
模倣した大きな魚は新しい存在と世界を生み出しました。この物語を通じて、集まるという行為に魅力的を感じました。
集い、積み重ねられていく経過や結果の中には良くも悪くもたくさんの出来事が存在します。
また形成してきた個々の魅力や時間も千差万別です。
しかし、これらの背景を知る機会は少なく、表面的もしくは普遍的な理解や解釈でとどまってしまうことが多いと感じています。
世間における個の尊重と社会とのバランスを「集」という行為から考えていきたいと思いました。
表現方法の1つとして「TYPE」シリーズというものに取り組んでいます。
- 1つの漢字を集合させて、その漢字の意味をもつ他の言葉(例:愛→LOVE、望→HOPE)にしたものを複数枚のアクリルの板にプリントした作品。
- 1つの漢字それを集合させたことによってできる言葉の意味は普遍的であるが、個々の意識は十人十色であり、一つの価値に縛られていない現実があること伝えたいと考えている。
- アクリルの板を重ねることで奥行きを生み出しより深い個々の意識や経過を表現している。
他、巻尺を使って有機物を作る「GROW」シリーズに取り組んでいる。
「GROW」シリーズ- 巻尺やメモリを印刷した紙(もしくはビニール状のもの)を使い、野菜や成長をイメージするような造形を制作している。
- 巻尺は、「計る」という行為によって、そのものの「個性」や「魅力」とは別に「視覚的に何かを判断する」ことができる存在であるため、慣れ親しんだ有機的な稜線やシルエットも、これを用いて作成することで普段とは異なる視点で存在価値を感じられるのではないかと考えている。